症状改善報告
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は安静にしていなくても治る、完治までの3つのプロセスとは?
- テニス肘
症例報告
top member丸山
「患者」
男性、38歳、造園業
「来院日」
平成30年3月下旬
「症状」
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
「来院経緯」
患者は造園業を営んでいる。
草木ハサミや刈込ハサミといった道具を使用し、毎日腕を酷使している。
そのため、2年前から左腕の内側上顆炎を発症。
職業柄、肘の痛みや手首の痛みが出ることは日常茶飯事であり、同僚たちも同じ痛みを患っていた。
患者は職業病だと諦め、整形外科でのリハビリや治療は行わず、サポーターの着用や患部のアイシングを行うことで痛みを紛らわせた。
仕事の作業で重い荷物を持つときは、左手を庇い右手をよく使うようになる。
半年後、左腕の使用を控えていたことで、内側上顆炎(ゴルフ肘)の痛みは緩和。
しかし、それに代わって右肘に痛みが出るようになる。
仕事後は右肘がズキズキと疼くような痛みを感じることが多くなった。
患者は「左肘と同様にサポーターとアイシングで治るだろう」と考え、病院に受診はせず。
仕事中はサポーターを付け、仕事後にはアイシングを行ったが、肘の痛みは緩和することはなかった。
患者は職業病だと諦めていたため治療らしい事はせず、腕の痛みを我慢したまま約1年が経過。
ある日、仕事でノコギリを使っている時に、右肘に電気が走ったような強い痛みが走る。
その日は腕を動かしていない状態でも肘に痛みを感じ、夜中は痛みで目が覚める程であった。
翌日、仕事中に肘に強い痛みが現れ、手に持っていた草切ハサミを落としてしまう。
明らかに業務に支障が出ているため、その日に整形外科を受診。
医師からは『外側上顆炎(テニス肘)』と診断。
ロキソニンテープを処方され、「安静にするように」との指示を受ける。
処方されたロキソニンテープを半日程貼っていたが、かぶれてしまったため常用を断念。
医師からは「安静に」と指示を受けていたが、仕事で腕を使わないという事は出来ず、肘を庇いながら仕事を続けた。
そのため痛みは日に日に増していき、仕事中は常に痛みを感じ、夜中は痛みで目が覚める事が多くなった。
仕事以外にも、お茶碗やコップを持つときなど、日常生活にも痛みを感じる頻度が増える。
患者は「このままでは仕事が出来なくなる」と考え、肘の痛みに特化した治療院を探す。
そんな折、友人から長年治らなかった腰痛が当院で完治したという話を聞き、当院のパンフレットをもらう。
パンフレットに上腕骨外側上顆炎(テニス肘)も適応疾患であると記載しており、当院に来院することを決意。
「治療経過」
1診目
患者は、仕事中の作業でハサミを使用するときが一番痛む。
特に太い枝などを切る時は、腕に力が入る分、肘に激痛が走る。
仕事で腕を酷使した日は、翌日の朝まで強い痛みが続いていることが多い。
患者から「最近は握力が落ちているように感じる」との訴え。
仕事だけでなく日常生活にも支障がでているため、患者からは「早急に改善したい」との要望。
触診と検査を行う。
中指伸展テスト(+)
Thomsenテスト(+)
前腕回内、回外位(+)
肘関節屈曲(-)伸展(+)
いずれの動作も写真の黄〇部分に痛みを訴えた。
圧痛は外側上顆周辺の広範囲に確認されたが、特に赤×の箇所に強い圧痛を確認。
肘関節周囲に熱感も確認。
触診と検査から『外側上顆炎(テニス肘)』と判断。
この判断をもとに治療を進めていく。
患者の外側上顆炎(テニス肘)は発症期間が長く、夜間痛と安静時痛を訴えており、状態は極めて重度である。
加えて、仕事で腕を使わないわけにはいかず、安静にすることも出来ない状態である。
完治するためには、出来るだけ詰めて治療を行うが必要であり、週に2回の来院を患者に促す。
患者の同意を得て、治療を開始。
施術室内で肘関節伸展位が一番強く痛むことから、この時の痛みをペインスケール「10」と設定。
(ペインスケールとは痛みを10段階で表わした指標のこと。10に近づくにつれ痛みが増す。患者に数字を示させる。)
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
内臓調整、頸椎調整、手関節アライメント調整
治療後、ペインスケール「10」→「9」
次回は3日以内に来院するように指示し、治療終了。
2診目
前回から4日後の来院。
患者から「肘の痛みに変化はない。仕事中も同じように痛みがあった。」との報告。
ペインスケール「9」のまま維持。
熱感、圧痛ともに確認。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
内臓調整、頸椎調整、腸腰筋弛緩調整
治療後、ペインスケール「9」→「8」
前腕回内位の痛みは軽減したが、それ以外の動作で出る痛みに変化はなし。
次回も3日以内に来院するように指示し、治療終了。
3診目
前回から3日後の来院。
患者から「仕事中はまだ痛い。今までは仕事の翌日まで痛みが続いていたが、その痛みが少し和らいだ気がする。」との報告。
ペインスケール「8」のまま維持。
熱感・圧痛ともに確認。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
内臓調整、頸椎調整、腸腰筋弛緩調整
治療後、ペインスケール「8」→「6」
前腕回内の痛み消失。
次回も3日以内に来院するように指示し、治療終了。
5診目
患者から「仕事中はまだ痛い。しかし仕事の翌日まで痛みが続くことはなくなり、2・3時間で痛みが引くようになった。」との報告。
ペインスケール「6」のまま維持。
圧痛はまだ確認されたが、肘周囲の熱感は消失。
夜間痛も改善してきたようだ。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
内臓調整、頸椎調整、腸腰筋弛緩調整
治療後、ペインスケール「6」→「4」
前腕回内・回外の痛み消失。
次回も3日以内に来院するように指示し、治療終了。
8診目
初診から3週間経過。
患者から「仕事中の痛みは和らいできた。今までは草木ハサミを使うと30分もすれば肘に痛みが出ていたが、最近は1時間くらい連続して使えるようになってきた。」との報告。
仕事後は1時間もすれば痛みが消失し、翌日まで痛みは続かないとのこと。
夜間痛は消失。
ペインスケールは「4」に減少。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
背部兪穴にお灸し、内臓調整
頸椎調整、前腕・上腕血流調整、手関節・肘関節アライメント調整
治療後、ペインスケール「4」→「3」
次回から1週間後に来院するように指示し、治療終了。
10診目
患者から「最近は肘のサポーターを付けていない。しかし、仕事中の痛みはだいぶ感じなくなっている。ハサミを使っていても、肘の痛みは悪化しない。」との報告。
ペインスケール「2」
熱感・圧痛ともに確認出来ない。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
背部兪穴にお灸し、内臓調整
頸椎調整、前腕・上腕血流調整、手関節・肘関節アライメント調整
治療後、ペインスケール「2」→「0」
中指伸展テスト(-)
Thomsenテスト(-)
施術室内で再現できる痛みはすべて消失した。
患者に仕事や日常でどのような時に痛みが出るかを確認するように指示し、治療終了。
13診目
患者から「仕事中に痛みはほとんど感じない。思い荷物を持っても大丈夫であった。以前と同じように仕事が出来ている。」との報告。
仕事中の痛みは消失。
仕事後に違和感程度の痛みが少し出るが、1時間もすれば痛みは引くとのこと。
ペインスケール「0」のまま維持。
治療:
曲池・合谷に接触鍼、百会に置鍼し、身体全体のエネルギー調整
背部兪穴にお灸し、内臓調整、
頸椎調整、前腕・上腕血流調整、手関節・肘関節アライメント調整
次回からは1ヶ月に1回のメンテナンス期に移行する旨を伝え、施術終了。
Q1、どのような症状でお困りでしたか?
またお困りの症状を治すために、今までどのような治療を受けてこられましたか?
肘か痛かった
Q2、鍼灸治療など、当院来院にあたって心配はなかったですか?
またその心配はどうやって解消しましたか?
なかった。
Q3、当院の施術を受けたときの印象・感想を教えてください。
丁寧な説明を毎回してくれたのが、良かった。
Q4、症状が改善した現在の想いをメッセージ下さい。担当が最高に喜びます。
気持ちよく仕事ができます!
お名前:前川 功介
ご住所:奈良市二名
ご年齢:38才
ご職業:造園
「担当からの考察」
今回の患者さんである前川さんの場合、1年以上も上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に悩まされていました。
同僚の方たちも同じ疾患を患っている人が多く、職業病だと諦め、治療らしい事は今までしなかったようです。
しかし1年以上も痛みが続き、痛みのせいで仕事道具であるハサミを上手く扱えなくなってしまいました。
そんな時にご友人の紹介で当院に来院されました。
初診時は「コップを持つのも痛い」と言っていた前川さんが、だんだんと今までの通りの仕事が行えるようになっていき、嬉しそうにされていた様子がとても印象的でした。
今では通常業務を行っても、肘の痛みは再発していません。
前川さんはお仕事で腕を毎日よく使うので、身体の事を考えると、今後もメンテナンスをする必要はあります。
それでも、メンテナンスをしていれば、これから先も肘の痛みが再発することはないでしょう。
前川さん、これからは痛みを気にせずに仕事に集中できますね!
今後は再発しないように、私がしっかりメンテナンスしていきますからね( ^^)
それでは治療の考察に移ります。
前川さんの症状は私が今までみた上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の中で、トップ3に入るくらい治療が難しい状態でした。
症状が強く出ているのも理由のひとつですが、前川さんの仕事がら腕を使わずに安静にする状況を作れないのが一番の理由でした。
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)で夜間痛や安静時痛が出ている場合、極めて重度の状態なので、腕を安静にして治療をするのがセオリーです。
でも前川さんの場合はそれが出来ず、毎日腕を酷使し続けている状態で完治を目指さなければなりませんでした。
そのためには、治療間隔を詰めて行う事が一番重要であり、初めの3週間は週に2回来院してもらいました。
治療方針として、
第一に、肘の熱感を取る事、
第二に、腕の疲労を抜く事
第三に、肘関節と手関節の可動域を上げる
という順序で治療を行いました。
患部の熱感の強さと夜間痛は比例している事が多く、目が覚める程の夜間痛があった前川さんの場合、まずは優先的に熱感を取る必要がありました。
熱感をとるには身体の回復力を上げる必要があるので、内臓調整を毎回行いました。
熱感が消失していくと同時に夜間痛が消失していき、この段階からスピードを上げて改善していきます。
次に、前川さんの腕は疲労が蓄積されていたため、腕の血流やリンパの流れを正常化させる調整をしました。
溜まっていた疲労が抜けることで、仕事中の痛みをより感じにくくなり、翌日まで痛みが続く事がなくなったのです。
最後に、肘関節と手関節の可動域を広げ、仕事道具のハサミをより使いやすく、且つ負担が肘だけでなく腕全体に分散されるように調整しました。
1年以上治らなかった上腕骨外側上顆炎(テニス肘)が、この3つのプロセスを踏むことで完治に至りました。
私はもう少し治療期間がかかると予想していましたが、計13回・2ヶ月弱で完治に導くことが出来ました。
今回の症例で、『重度の上腕骨外側上顆炎(テニス肘)でも治療を詰めて、きちんとした順序で治療をすれば、安静にしていなくても完治する』という事が分かり、私にとってとても貴重な経験となりました。
この経験をもとに、より多くの上腕骨外側上顆炎(テニス肘)に悩む方たちを治していきたいと思います。
最後に、
どこに行っても良くならなかった人こそ「何とかしてあげたい!」という強い想いを持って、私が日々治療に専念している事を、皆さんに知っておいて頂きたいです。